退職所得計算ツール|令和8年分 退職所得控除・所得税・住民税まで対応
退職金の手取りを即算出。退職所得控除・1/2課税・短期退職手当等/特定役員退職手当等ルール・申告書未提出時の20.42%一律源泉徴収にも対応。令和8年分の所得税速算表で計算し、住民税10%の分離課税も内訳表示。
こんな場面で使えます
- 50代後半の会社員: 定年退職時の手取り額を試算し、老後資金計画に組み込みたいとき
- 早期退職制度の利用検討者: 割増退職金込みの手取りを比較し、応募するかを判断したいとき
- 経営者・役員: 役員退職慰労金の支給時に、会社側の損金算入額と受給者側の手取り額をあわせて確認したいとき
- 人事・総務: 退職者への「退職金の税引き後いくら?」という問い合わせに即答したいとき
本ツールは所得税法第30条の退職所得ルールを忠実に実装し、令和8年分の所得税速算表・住民税10%の分離課税・ 復興特別所得税(所得税×2.1%)を同時に計算します。「退職所得の受給に関する申告書」の提出有無による税額差も確認できます。
退職所得の計算の仕組み
退職所得は、長年の勤続に対する報償という性格を踏まえて、他の所得と比べて大幅に優遇された計算方式が定められています。 仕組みは次の4ステップです。
ステップ1: 退職所得控除額を求める
勤続年数に応じて「まず引き算できる金額」が決まります。この金額を退職金から差し引いた残りだけが課税対象になります。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年) |
- 勤続年数の端数: 1年未満の端数は切り上げます(例: 10年2ヶ月 → 11年として計算)。
- 障害退職の加算: 心身の障害が直接の原因で退職した場合は、上記に100万円が加算されます(所得税法施行令第71条の2)。
ステップ2: 課税退職所得金額を求める(1/2課税が基本)
退職金から控除額を引いた残りに1/2をかけたものが、原則としての課税退職所得金額です。 この「1/2」が退職所得が優遇されていると言われる最大の理由です。
計算式(原則): (退職金 − 退職所得控除額) × 1/2 = 課税退職所得金額(1,000円未満切捨て)
ただし、次の2つの例外では1/2が適用されない、または制限されます。
ステップ3: 所得税・復興特別所得税を計算する
課税退職所得金額に所得税法第89条の速算表(超過累進税率)を適用し、さらに復興特別所得税(所得税×2.1%)を上乗せします。
- 所得税 = 課税退職所得金額 × 税率 − 控除額(100円未満切捨て)
- 復興特別所得税 = 所得税 × 2.1%(100円未満切捨て、2037年末まで)
退職金は給与や事業所得と分離して課税されるため、他の所得と合算して累進税率が上がることはありません。これも退職所得優遇ルールの一つです。
ステップ4: 住民税(分離課税10%)を加える
住民税は課税退職所得金額に一律10%(道府県民税4% + 市町村民税6%)を乗じた額を、退職金支払時に勤務先が特別徴収します (地方税法第50条の2・第328条)。所得税同様、他の所得との合算はありません。
端数処理は「合計10%に対して1回」ではありません。道府県民税4%と市町村民税6%をそれぞれ計算し、それぞれ100円未満を切り捨ててから合算します。
- 道府県民税 = 課税退職所得金額 × 4% → 100円未満切捨て(地方税法第50条の4)
- 市町村民税 = 課税退職所得金額 × 6% → 100円未満切捨て(地方税法第328条の3)
- 住民税額 = 上記2つの合計(合計後に改めて切り捨てることはしません)
- ※ 税額そのものが100円未満になる極小のケースだけ扱いが変わります(後述)
根拠は地方税法第20条の4の2第3項前段(確定金額に100円未満の端数があるときは切り捨てる)です。 同条第8項には道府県民税と市町村民税を「一の地方税とみなす」という規定がありますが、 その効力は括弧書きで「確定金額の全額が百円未満であるときに全額を切り捨てる部分に限る」と限定されています。 退職金の住民税で通常発生するのは第3項前段の端数切捨てであり、第8項のみなし対象外です。したがって両税は別個の地方税のまま個別に端数処理します。
なお第3項には2つの局面があります。前段は「端数があるとき」の端数切捨て、後段は「その全額が百円未満であるとき」の全額切捨てです。 第8項が両税を一の地方税とみなすのは後段(全額切捨て)に限られるため、 全額切捨てを発動するかどうかは常に両税の合算額で判定します。 一方、税額そのものが100円未満のときは、その金額は「端数」ではなく「全額」なので、前段の端数切捨ての対象になりません。 つまり合算額が100円以上なら全額切捨ては発動せず、100円未満の税額は切り捨てられずにそのまま残ります。
具体例1(両税とも100円未満): 課税退職所得金額が1,000円なら、道府県民税40円・市町村民税60円でどちらも100円未満です。 合算100円は「全額が100円未満」に当たらないため全額切捨ては発動せず、両税とも端数ではなく全額なので切り捨てません。住民税額は100円です。
具体例2(片方だけ100円未満): 課税退職所得金額が2,000円なら、道府県民税80円・市町村民税120円。 合算200円なので全額切捨ては発動しません。市町村民税は100円を超えるので端数20円を切り捨てて100円、 道府県民税80円は端数ではなく全額なのでそのまま残り、住民税額は180円です。
この扱いになるのは課税退職所得金額が1,000円または2,000円のときだけです。退職金ベースでは、 一般の退職(2分の1課税が適用される場合)は退職所得控除額を2,000円〜5,999円上回るとき、 役員等で勤続5年以下(2分の1課税が適用されない場合)は1,000円〜2,999円上回るときが該当します (課税退職所得金額は1,000円未満切捨てのため、それぞれこの範囲が1,000円・2,000円になります)。 課税退職所得金額が3,000円以上になれば両税とも100円以上になり、通常どおり個別に100円未満を切り捨てます。 また課税退職所得金額は1,000円未満を切り捨てるため、合算額が100円未満になる(=後段の全額切捨てが実際に発動する)ことはありません。
例えば課税退職所得金額が2,911,000円なら、道府県民税は116,440円 → 116,400円、市町村民税は174,660円 → 174,600円、 住民税額は合計291,000円です。切り捨て前の合計291,100円に対して1回だけ切り捨てる方式(291,100円)とは100円ずれます。 本ツールの計算結果は、東京都大田区・広島市・磐田市などが公開している退職所得の住民税計算例と同じ個別切捨て方式に揃えています。
最終的な手取り額は 退職金総額 − 所得税 − 復興特別所得税 − 住民税 です。本ツールではこれらをすべて自動で計算します。
退職所得控除額の速算表(早見表)
代表的な勤続年数ごとの退職所得控除額です。勤続年数をそのまま本ツールに入力すれば、表と同じ結果が得られます。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 | 計算式 |
|---|---|---|
| 1年(下限) | 80万円 | 最低保障80万円 |
| 5年 | 200万円 | 40万 × 5 |
| 10年 | 400万円 | 40万 × 10 |
| 15年 | 600万円 | 40万 × 15 |
| 20年 | 800万円 | 40万 × 20 |
| 25年 | 1,150万円 | 800万 + 70万 × 5 |
| 30年 | 1,500万円 | 800万 + 70万 × 10 |
| 35年 | 1,850万円 | 800万 + 70万 × 15 |
| 40年 | 2,200万円 | 800万 + 70万 × 20 |
勤続20年を境に1年あたりの控除額が40万円→70万円に増えるため、長く勤めるほど1年の節税効果が大きい構造になっています。
1/2課税の例外 — 短期退職手当等と特定役員退職手当等
退職所得の原則は「(退職金−控除額)×1/2」ですが、勤続5年以下の退職金については、 税負担を調整するために1/2課税が制限・除外されます。
1. 特定役員退職手当等(役員等・勤続5年以下) — 1/2適用なし
取締役・監査役・執行役・理事・国会議員・地方議員など「役員等」に該当する人が、役員としての勤続5年以下で受け取る退職金は 特定役員退職手当等として、1/2課税が一切適用されず、控除超え部分の全額が課税対象になります(所得税法第30条第4項)。
計算式: (退職金 − 控除額) = 課税退職所得金額(1/2なし・1,000円未満切捨て)
- 「役員等」とは法人税法上の役員、国会議員・地方議員、国家公務員・地方公務員を指します。医療法人・一般社団法人・学校法人などの理事(理事長を含む)も法人税法上の役員に当たり、役員としての勤続5年以下であればこの区分の対象です。
- 勤続年数は1年未満切上で判定するため、1年と1日でも勤続2年として扱われます。
- 執行役員・部長等、法人税法上の役員に該当しない肩書きだけの「役員」はこの区分に含まれません(要確認)。
2. 短期退職手当等(一般・勤続5年以下) — 300万円超の部分は1/2なし
役員等でない一般の従業員で勤続5年以下の退職金のうち、控除超え部分が300万円を超えるケースでは、 超過分については1/2課税が適用されません(所得税法第30条第5項、令和4年分以降)。
| 控除超え部分 | 1/2課税 |
|---|---|
| 300万円以下の部分 | 適用あり(1/2) |
| 300万円超の部分 | 適用なし(全額) |
計算例: 勤続3年(控除120万円)で退職金600万円のケース
- 控除超え部分: 600万 − 120万 = 480万円
- 300万以下部分: 300万 × 1/2 = 150万円
- 300万超部分: 480万 − 300万 = 180万円(全額課税)
- 課税退職所得金額: 150万 + 180万 = 330万円
本ツールでは「役員等の区分」と「勤続年数」を入力すれば、これらの例外ルールが自動で適用されます。
「退職所得の受給に関する申告書」を必ず提出するべき理由
退職時に勤務先から渡される「退職所得の受給に関する申告書」を提出すると、 上で説明した退職所得控除・1/2課税・累進税率の優遇を適用した正しい税額で源泉徴収されます。
一方で、これを提出しないと、退職金総額に一律20.42%(所得税20%+復興特別所得税0.42%)が 源泉徴収されます(所得税法第201条第3項・第213条第1項)。一律税率のため、退職所得控除も1/2課税も適用されず、 ほとんどのケースで本来の税額より大幅に多く徴収されることになります。
| 申告書 | 所得税・復興特別 | 住民税 |
|---|---|---|
| 提出あり(通常) | 退職所得控除・1/2課税・速算表を適用した正しい税額 | 課税退職所得金額 × 10%を勤務先が特別徴収 |
| 提出なし | 退職金総額 × 20.42%(一律) | 市町村により別途特別徴収(本ツール表示は0円) |
申告書は退職時に勤務先が用意する書式で、住所・氏名・勤続期間・他社からの退職金の有無などを記入するだけです。 出し忘れた場合でも、翌年に確定申告すれば過大徴収分を取り戻せますが、手続きの手間を考えると 退職時に必ず提出するほうがスムーズです。
早期退職制度・役員退職金の実務的な注意点
早期退職制度(割増退職金)の場合
- 早期退職制度で上乗せされる「割増退職金」も退職所得に含まれます。退職金総額(通常分+割増分)を入力してください。
- 会社都合退職の扱いになるケースでも、退職所得の計算ルールは自己都合と同じです。失業給付(雇用保険)の給付日数や 待期期間の扱いは別の話なので注意。
- 退職金を確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)として受け取る場合、一時金で受け取れば退職所得、 年金で受け取れば雑所得(公的年金等)となり、課税方法が異なります。
役員退職金を支給する側(会社)の注意点
- 役員退職慰労金は会社側の損金算入に「不相当に高額な部分は損金不算入」という制限があります(法人税法第34条第2項)。 適正額の算定は「功績倍率法」が実務で用いられ、最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率(代表取締役で2〜3倍が目安)で計算します。
- 本ツールは受給者側の税額を計算するものです。会社側の損金算入可能額は別途、税理士に相談してください。
- 役員退職金の支給には株主総会の決議が必要です(会社法第361条)。議事録の作成・保管も併せて必要です。
同じ年に複数の退職金を受け取る場合
子会社への出向後に本社・子会社両方から退職金を受け取るケースや、転職先で短期間勤務して再度退職するケースなど、 同一年に複数の退職金を受け取る場合は、合算した退職所得控除額の計算・勤続期間の重複調整など複雑になります。 「退職所得の受給に関する申告書」に前職分を記載することで調整できますが、 自信がない場合は税理士に確認することをおすすめします。
計算の根拠・免責
- 所得税法第30条: 退職所得の定義・計算方式(1/2課税)・短期退職手当等・特定役員退職手当等
- 所得税法第89条: 所得税の税率(超過累進7段階)
- 所得税法第201条・第203条: 退職手当等に係る源泉徴収税額の計算
- 所得税法施行令第69条・第71条の2: 勤続年数の計算・障害退職の加算
- 地方税法第50条の2・第328条: 退職所得の分離課税(住民税10%)
- 地方税法第50条の4・第328条の3: 退職所得に係る所得割の税率(道府県民税4%・市町村民税6%)
- 地方税法第20条の4の2第3項: 確定金額の100円未満切捨て(前段)・全額が100円未満のときの全額切捨て(後段)。道府県民税・市町村民税は別個の地方税としてそれぞれ端数処理します。第8項の「一の地方税とみなす」規定は後段(全額切捨て)に限定されるため、全額切捨ての可否は両税の合算額で判定します。100円未満の税額は「端数」ではなく「全額」なので前段の端数切捨ての対象外となり、合算額が100円以上ならそのまま残ります
- 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法: 復興特別所得税(2037年末まで、所得税×2.1%)
- 国税庁 タックスアンサー No.1420・No.2732・No.2735: 退職金と税・源泉徴収の実務
計算結果は参考値です。退職金の課税判定には、退職理由(通常退職/障害退職/死亡退職)、 役員の就任期間と使用人兼務の有無、他社からの退職金の有無、企業年金・確定拠出年金からの一時金など、 個別の事情で結果が変わる要素があります。 実際の退職金の手取り額・税務判断は、退職前に税理士など専門家にご確認ください。
出典・編集情報
本ツールおよび解説は、以下の公的機関の公表情報を一次ソースとして作成しています。
- e-Gov 所得税法第30条(退職所得)・第89条(税率)・第201条・第203条・施行令第69条・第71条の2
- e-Gov 地方税法第50条の2・第328条(退職所得の分離課税)
- 国税庁 タックスアンサー No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
- 国税庁 タックスアンサー No.2732 退職手当等に対する源泉徴収
- 国税庁 タックスアンサー No.2735 同一年中に2か所以上から退職手当等を受け取った場合
執筆: 業務計算ポータル編集部
本サイトの編集方針・収益化方針については以下をご参照ください。
※ 計算結果は参考値です。退職金の正式な税額確定・個別事情の判定にあたっては、勤務先の給与計算担当または税理士・所轄税務署等にご確認ください。
本ツールは令和8年分(2026年)の税率・基準をもとに計算しています。最新の情報は各省庁のWebサイト等でご確認ください。
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