固定残業代計算ツール|法的有効性・超過分判定まで無料
基本給と固定残業時間から固定残業代(みなし残業代)を即計算。詳細モードは実残業時間と比較して超過分の追加支払額も判定。月60時間超の50%割増・最高裁判例の3要件・雇用契約書チェックまで解説。労働基準法第37条準拠。
こんな場面で使えます
- 求人票の確認: 「月給30万円(固定残業代45時間分込み)」という求人票を見て、実際の残業45時間で妥当か確認したいとき
- 超過分の追加支払い試算: 月30時間の固定残業代だが先月は50時間残業した。いくら追加で支払われるべきか知りたいとき
- 年収構造の把握: 自分の年収のうち固定残業代がどの程度の割合を占めるか、内訳を確認したいとき
- 雇用契約書の有効性チェック: 雇用契約書に書かれた固定残業代の条項が、最高裁判例の3要件を満たしているか確認したいとき
本ツールはシンプルモード(固定残業代の金額を計算)と詳細モード(実残業時間を入力して超過分の追加支払額まで判定)の2モードに対応。 月60時間超の50%割増も自動で通算判定します。
固定残業代(みなし残業代)とは?
固定残業代とは、実際の残業時間にかかわらず、あらかじめ一定時間分の残業代を毎月固定で支払う制度です。 「みなし残業代」「定額残業代」とも呼ばれ、労働基準法第37条で定められた割増賃金率(時間外労働25%以上)に基づいて算出されます。
導入目的
- 給与計算事務の効率化: 毎月の残業時間集計の手間を軽減
- 人件費の予測可能性: 固定額となり月次の人件費が安定する
- 労働者への明示: 月給に含まれる残業代部分が明確になる
労働者保護の観点
固定残業代は便利な制度である一方、制度を悪用して実際の残業代を切り詰めるケースも少なくありません。 労働基準法第37条は強行法規であり、たとえ雇用契約書に「固定残業代に含む」と書かれていても、法定の割増賃金を下回ることは許されません。 そのため最高裁判例は、固定残業代が有効と認められるために厳しい要件を定めています(次項)。
固定残業代が有効となる3要件(最高裁判例)
雇用契約書や就業規則に固定残業代が書かれていても、以下の3要件をすべて満たさないと法的に無効となり、 企業側が固定残業代とは別に全額の残業代支払義務を負う可能性があります。
- ① 明確区分性: 通常の労働時間の賃金(基本給)と、時間外労働の対価である割増賃金部分が、金額または計算方法によって明確に区分されていること。 「月給30万円(固定残業代含む)」のように内訳が示されていない契約は無効リスクが高い。
- ② 対価性: 固定残業代が、時間外労働(残業)の対価として支払われていると認められること。 役職手当・職務手当などを名目上「固定残業代」と称するだけでは不十分。
- ③ 超過分の支払い合意: 固定残業時間を超える実残業が発生した場合、超過分は別途追加で支払う旨が雇用契約書・就業規則・給与明細などで合意されていること。
根拠判例
- 国際自動車事件(最高裁一小 平成29年2月28日判決): 歩合給から残業代を差し引く賃金体系について、通常賃金と割増賃金の判別可能性を欠くとして無効とした
- 医療法人康心会事件(最高裁二小 平成29年7月7日判決): 年俸に時間外手当を含む旨の合意があっても、通常賃金と割増賃金部分が判別できない場合は固定残業代として無効
判例の射程は個別事案に依存します。自分の雇用契約書が有効かどうか判断に迷う場合は、社会保険労務士や弁護士への相談をおすすめします。
固定残業時間を超えた場合の追加支払義務
労働基準法第37条は、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える時間外労働に対して、割増賃金の支払義務を使用者に課しています。 固定残業時間を超える実残業が発生した場合、超過分は固定残業代とは別に追加で支払う必要があります。 これは最高裁判例で有効とされた固定残業代制度の前提条件でもあります。
本ツールの詳細モードで超過分を試算
ツール上部の「計算モード」で詳細モードを選択し、実際の残業時間を入力すると、 固定残業時間を超過した分の追加支払額が自動計算されます。 月額支給額合計(固定+超過分)や年収に占める固定残業代の割合(参考値)も同時に表示されます。
月60時間超の50%割増の扱い
- 月60時間までの時間外労働: 1.25倍(労基法第37条1項本文)
- 月60時間超の時間外労働: 1.50倍(労基法第37条1項ただし書)
- 2023年4月から中小企業にも50%割増が適用されています(現時点で全企業が対象)
本ツールは固定残業時間と超過分を通算して60時間閾値を判定します。 たとえば「固定30時間+実残業70時間(=超過40時間)」の場合、超過40時間のうち 60時間枠の残り30時間分は1.25倍、60時間を超える10時間分は1.50倍で自動計算されます。 固定残業時間が既に60時間を超えている場合は、超過分はすべて1.50倍で計算されます。
求人票・雇用契約書での注意点
「月給30万円(固定残業代40時間分含む)」の読み方
求人票でこの記載を見た場合、以下を必ず確認してください。
- 基本給と固定残業代の内訳金額: たとえば「基本給23万円+固定残業代7万円(40時間分)」のように分解されているか
- 固定残業時間の明示: 何時間分を固定残業代として見込んでいるか
- 超過分の支払い明記: 40時間を超えた分は別途支払う旨の記載があるか
これらの記載がない求人票は、厚生労働省の職業安定法改正(2018年)により掲載NG事項にあたります。 応募前に派遣元・ハローワーク経由で内訳を確認しましょう。
労働条件通知書での確認事項
- 固定残業代の金額(月額)
- 固定残業代に含まれる時間数
- 超過分は別途支給する旨の文言
- 割増率(1.25倍・1.50倍)の明記
固定残業時間の妥当性(目安)
- ~45時間/月: 36協定の原則上限内。安全圏
- 45~60時間/月: 36協定の特別条項に該当。常態化はリスクあり
- 60~80時間/月: 過労死ライン目前。50%割増対象となり企業負担も大きい
- 80時間超: 過労死ライン。原則として設定すべきでない水準
年収に占める固定残業代の割合
固定残業代が基本給に対して過度に大きい場合、以下のリスクがあります。
- 基本給連動手当の目減り: 賞与・退職金・社会保険料の算定基礎となる基本給が低く抑えられる
- 実質的な残業の常態化: 固定残業時間分は「既に払った」とみなされ、長時間労働が前提化しやすい
- 最低賃金違反リスク: 基本給 ÷ 月所定労働時間が地域の最低賃金を下回るケースも
本ツールの詳細モードでは、年収に占める固定残業代の割合(参考値)を表示します。 一般に、固定残業代が年収全体の15~20%を超える場合は基本給設計が歪んでいる可能性があり、 雇用契約書の見直しや交渉の検討材料となります。
計算方法
固定残業代は以下の手順で計算します。
- 時間単価 = 基本給 ÷ 月所定労働時間
- 60時間以内の割増単価 = 時間単価 × 1.25(労基法第37条1項本文)
- 60時間超の割増単価 = 時間単価 × 1.50(労基法第37条1項ただし書)
- 固定残業代(月額) = 割増単価 × 固定残業時間(円未満切上げ)
端数処理は労働者有利の原則に従い、円未満を切上げています。 深夜労働(22時~5時)や休日労働の場合は別途の割増率が適用されるため、本ツールの対象外です(通常の残業代計算ツールをご利用ください)。
固定残業代に関するトラブル事例と対処法
よくあるトラブル
- 超過分が支払われていない: 固定残業時間を超えても追加支給がない → 過去2年分の未払い残業代請求が可能(時効延長で2026年現在は3年分、2020年4月以降分)
- 固定残業時間が実態と合っていない: 実残業が常に固定時間を大きく上回っている → 契約の無効主張や再交渉の余地あり
- 求人票と雇用契約書の内容が違う: 求人票より不利な条件の契約は改正職業安定法上の問題 → ハローワークに通報可能
- 雇用契約書に固定残業代の内訳がない: 3要件の①明確区分性を欠くため無効リスク
相談先
- 労働基準監督署: 労基法違反が明白な場合の行政指導を依頼できる
- 社会保険労務士: 雇用契約書の法的有効性チェック・未払い残業代の試算
- 弁護士: 会社との交渉・労働審判・訴訟が視野に入る場合
- 総合労働相談コーナー: 全国の労働局に無料設置
本ツールの計算結果を持参することで、専門家への相談がスムーズになります。 未払い額の概算がわかれば、請求可能性の検討材料になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 固定残業代は残業がゼロでも必ず支給されますか?
有効な固定残業代は、実際の残業時間がゼロの月でも全額支給しなければなりません。固定残業代はあくまで時間外労働の対価として「毎月固定で支払う」合意をしたものであり、使用者の都合で支給をカットすることは賃金全額払いの原則(労働基準法24条)に違反します。ただし、固定残業代が「業績連動手当」等の名目で支払われている場合は業績ゼロ月の扱いが変わる場合もあるため、雇用契約書の記載内容を確認してください。
Q2. 固定残業代が法的に有効となる3要件とは何ですか?
最高裁判例(国際自動車事件・平成29年2月28日、医療法人康心会事件・平成29年7月7日)が定める3要件は次のとおりです。①明確区分性:通常賃金と割増賃金部分が金額または計算方法で明確に区分されていること。②対価性:時間外労働の対価として支払われていると認められること。③超過分支払合意:固定残業時間を超えた場合に超過分を別途支払うことが合意されていること。3要件のいずれかを欠く場合、固定残業代は無効となり使用者は全額の残業代支払義務を負います。
Q3. 固定残業時間を超えた場合の追加支払いはどう計算しますか?
追加支払額は「(実残業時間 − 固定残業時間)× 割増単価」で計算します。割増単価は基本給÷月所定労働時間×割増率(1.25または1.50)です。月60時間を超える時間外労働には50%割増(1.50倍)が適用されます(労働基準法37条1項ただし書)。この50%割増は2023年4月から中小企業にも適用されています。固定残業時間と超過分を通算して60時間を超える部分は自動的に1.50倍となります。
Q4. 求人票に固定残業代を記載する義務はありますか?
2018年(平成30年)の職業安定法改正・同法施行規則4条の2第3項により、固定残業代を含む場合の求人票への記載が義務化されました。具体的には「固定残業代の金額・時間数・超過分は別途支払う旨」の3点を明示しなければなりません。「月給30万円(固定残業代含む)」のように内訳を示さない記載は規定違反です。違反が発覚した場合、ハローワークへの求人掲載取消や指導対象となることがあります。
Q5. 固定残業代があると最低賃金の計算はどうなりますか?
最低賃金法上の最低賃金との比較は、固定残業代を除いた「通常の労働時間に対する賃金」で判定します(最低賃金法4条)。固定残業代は割増賃金部分であるため、基本給÷月所定労働時間が地域別最低賃金を下回ってはなりません。たとえば東京都の令和6年度最低賃金1,163円/時で月所定労働時間160時間なら基本給は最低186,080円必要です。固定残業代がいくら大きくても基本給が最賃未満なら違反となります。
Q6. 固定残業代の未払いは何年さかのぼって請求できますか?
2020年4月1日以降に発生した未払い賃金の消滅時効は3年です(労働基準法115条、2020年4月改正)。それ以前の2020年3月31日以前発生分は2年です。つまり2026年現在、最大で2023年4月以降分(3年分)の未払い固定残業代を請求できます。時効の起算点は各給与支払日であるため、証拠として給与明細・タイムカード・メール等の記録を保存しておくことが重要です。請求方法(労働審判・訴訟等)は社会保険労務士または弁護士にご相談ください。
Q7. 月60時間超の50%割増は2023年4月から中小企業も対象ですか?
そのとおりです。労働基準法37条1項ただし書の月60時間超の50%割増は、2023年(令和5年)4月1日から中小企業にも適用されています。これ以前は大企業のみが対象で中小企業は25%割増でした。2026年現在、規模を問わず全企業が対象となっており、月60時間を超える時間外労働1時間あたりの割増賃金は時間単価の50%以上でなければなりません(時間単価×1.50倍以上)。
Q8. 固定残業代の割合が年収の20%を超えていると問題がありますか?
法律上の上限はありませんが、固定残業代が年収の20%超になると複数のリスクが生じます。①賞与・退職金の算定基礎となる基本給が低くなる、②最低賃金違反リスクが高まる、③実際の労働時間が固定残業時間を恒常的に超える場合は追加支払義務が発生し続ける、④健康保険・厚生年金の標準報酬月額が低くなり将来の給付額に影響します。固定残業代の設計に疑問がある場合は社会保険労務士への相談をおすすめします。
計算の根拠・免責
根拠法令・判例
- 労働基準法第37条(時間外・休日及び深夜の割増賃金)
- 労働基準法第37条1項ただし書(月60時間超の50%割増。2023年4月から中小企業にも適用)
- 国際自動車事件(最高裁一小 平成29年2月28日判決)
- 医療法人康心会事件(最高裁二小 平成29年7月7日判決)
- 職業安定法施行規則(求人票の固定残業代明示義務。2018年改正)
免責
本ツールの計算結果は参考値であり、正式な法的判断を行うものではありません。 固定残業代条項の有効性や未払い残業代の請求可能性などの正確な法的判断は、 社会保険労務士・弁護士などの専門家にご確認ください。 特に深夜労働・休日労働・裁量労働制・管理監督者の扱いなど個別事情がある場合、本ツールの単純計算では判定できない論点があります。
本ツールは令和8年度(2026年)の税率・基準をもとに計算しています。最新の情報は各省庁のWebサイト等でご確認ください。
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