給与計算 初心者ガイド(令和8年版)|初めて経理担当を任された方へ
中小企業で初めて経理を任された方向け。給与計算の全体像・控除の計算順序(社保→所得税→住民税)・初心者がつまずくポイントを令和8年度の最新情報で解説。無料の計算ツール13本へのリンク付き。
中小企業で初めて経理担当を任された方に向けて、給与計算に必要な知識を体系的に解説します。 難しそうに見える給与計算も、「何を計算して、どの順序で引いていくか」を理解すれば、全体像がつかめます。
この記事を読むと、以下のことが理解できます。
- 給与計算の全体の流れ(毎月・年間)
- 給与の構成要素(基本給・手当・通勤費)
- 控除の計算順序(社会保険料→所得税→住民税)
- 初心者がつまずきやすいポイント7選
- 当ポータルの無料計算ツール一覧(13本)
2026年現在(令和8年度)の情報をベースに解説しています。
給与計算の全体像|毎月の流れ
給与計算とは、従業員に支払う給与額を正確に計算し、所定の控除を差し引いて手取り額を確定する作業です。 毎月の定例作業と、年末調整・源泉徴収票交付といった年次作業があります。
毎月の給与計算の流れ
- 勤怠集計
タイムカード・勤怠システムから出勤日数・残業時間・欠勤日数・有給休暇取得日数を集計します。
- 支給額の計算
基本給+各種手当(残業代・通勤費等)を計算し、総支給額を確定します。
- 控除額の計算
社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)→ 所得税(源泉徴収)→ 住民税の順に計算します。
- 手取り額の確定
総支給額 − 控除合計 = 差引支給額(手取り)。給与振込または現金支払いを行います。
- 各種申告・納付
源泉徴収した所得税を翌月10日(原則)までに納付。社会保険料は翌月末までに納付します。
給与の構成要素|基本給・手当・通勤費
給与(総支給額)は複数の要素から成り立っています。それぞれの扱いを正確に理解することが給与計算の第一歩です。
| 項目 | 内容 | 社会保険の対象 | 所得税の対象 |
|---|---|---|---|
| 基本給 | 雇用契約で定めた基本的な賃金 | 対象 | 対象 |
| 役職手当 | 管理職・主任等の職位に対する手当 | 対象 | 対象 |
| 残業代 | 法定時間外労働・休日・深夜労働への割増賃金 | 対象 | 対象 |
| 家族手当 | 扶養家族に応じた手当(支給条件あり) | 対象 | 対象 |
| 通勤手当 | 通勤に要する費用の補助 | 対象 | 一定額まで非課税※ |
| 住宅手当 | 住居費の補助 | 対象 | 対象 |
| 欠勤控除 | 欠勤日数分の賃金を差し引く(控除) | — | — |
通勤手当は一定額まで所得税の非課税対象ですが、社会保険料の算定基礎(標準報酬月額)には含めます。 この点は混同しやすいので注意してください。
残業代の計算方法を詳しく確認したい方は、当ポータルの計算ツールをご利用ください。
控除項目の計算順序(これが最重要)
給与から引かれる控除項目には計算順序があります。この順序を間違えると所得税額が狂います。
控除の計算順序
① 総支給額(基本給 + 各種手当)
② ①から 社会保険料(健康保険 + 厚生年金 + 雇用保険)を控除
③ ②の金額 + 扶養控除等 をもとに 所得税(源泉徴収税額)を計算
④ ③で求めた所得税を控除
⑤ 住民税(特別徴収)を控除
⑥ その他控除(財形貯蓄・労働組合費等)を控除
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差引支給額(手取り)= ① − ② − ④ − ⑤ − ⑥
所得税は社保を引いた後の金額で計算
所得税(源泉徴収税額)の計算は、総支給額から社会保険料を差し引いた後の「社会保険料控除後の給与等の金額」をもとに国税庁の税額表を引きます。社保を引く前の総支給額で計算してしまうと、所得税を過大に徴収することになります。
法定福利費(会社負担分の社会保険料)の計算は、以下のツールで確認できます。
- 法定福利費計算ツール(会社負担分の社保料を計算)
- 雇用保険料計算ツール(従業員負担・会社負担の分計算)
社会保険料の計算
社会保険料(健康保険・厚生年金)の従業員負担分は、標準報酬月額をもとに計算します。 標準報酬月額とは、毎月の給与(通勤手当を含む報酬月額)を一定の区分に当てはめた金額です。
| 保険種別 | 計算方法 | 従業員負担 | 会社負担 | 納付先 |
|---|---|---|---|---|
| 健康保険 | 標準報酬月額 × 料率(都道府県別) | 料率の1/2 | 料率の1/2 | 全国健康保険協会(協会けんぽ)または健保組合 |
| 厚生年金保険 | 標準報酬月額 × 18.300% | 9.150% | 9.150% | 日本年金機構 |
| 介護保険 | 標準報酬月額 × 1.60%(協会けんぽ。組合健保は別途確認) | 0.80% | 0.80% | 健康保険の保険者(40〜64歳のみ) |
| 雇用保険 | 賃金総額 × 1.5%(一般の事業) | 0.6% | 0.9% | 都道府県労働局 |
| 労災保険 | 賃金総額 × 業種別料率 | 負担なし | 全額 | 都道府県労働局 |
標準報酬月額は4〜6月の報酬をもとに毎年9月に見直されます(定時決定)。 また、昇給・降給等で報酬が大きく変わった場合は、随時改定(月額変更届)が必要です。
雇用保険料の詳細は計算ツールで確認できます。
- 雇用保険料計算ツール
- 法定福利費計算ツール(社保料の会社負担分を含む)
所得税の源泉徴収
毎月の給与から源泉徴収する所得税額は、国税庁の「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」を参照して求めます。
源泉徴収税額の求め方
① 社会保険料控除後の給与等の金額を計算
(総支給額 − 社会保険料の従業員負担合計)
② 「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」を参照
→ 扶養親族等の数(0人〜7人以上)ごとに税額が示されている
③ ①の金額と扶養親族等数が交差するセルの金額が源泉徴収税額
甲欄: 扶養控除等申告書を提出した主たる給与の受給者
乙欄: 申告書未提出(副業・掛け持ち等)→ 税率が高め
扶養親族等の数は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」で確認します。 入社時に必ず受け取り、保管してください。
源泉徴収税額の計算ツールと、アルバイト・パートの計算ツールも用意しています。
住民税(特別徴収)
会社は従業員の住民税を毎月の給与から天引きし、翌月10日までに市区町村へ納付する義務があります(特別徴収)。
毎年5月頃に、各市区町村から「特別徴収税額の決定・変更通知書」が従業員ごとに届きます。 その通知書に記載された月額を6月分〜翌年5月分の給与(12回)から控除します。
| 時期 | 作業内容 |
|---|---|
| 毎年5月 | 市区町村から特別徴収税額通知書が届く |
| 6月給与〜 | 通知書の金額を月々の給与から控除開始 |
| 翌月10日まで | 前月徴収分を市区町村に納付(12ヶ月継続) |
| 従業員が入社した場合 | 前職の会社から特別徴収の引き継ぎ手続きが必要な場合あり |
| 従業員が退職した場合 | 残り分を一括徴収 or 普通徴収に切り替え |
普通徴収との違い
住民税の徴収方法には「特別徴収(給与天引き)」と「普通徴収(従業員が自分で納付)」の2種類があります。原則として給与所得者は特別徴収が義務付けられており、会社は正当な理由がない限り普通徴収に切り替えることができません。
初心者がつまずくポイント7選
初心者がつまずきやすいポイント一覧
- 月の途中入社・退社の日割り計算: 「暦日数」か「所定労働日数」かは就業規則次第。社保は日割りなし(月単位)
- 端数処理のルール: 社会保険料は50銭以下切捨て・50銭超切上げ。所得税は1円未満切捨て(会社が定めた方法でOKな場合も)
- 賞与計算は通常給与と別計算: 社保料は賞与にも標準賞与額の計算が必要。所得税も賞与専用の税額表を使う
- 固定残業代の割増賃金計算: 固定残業代制度でも実際の残業が超えたら追加支払い義務あり
- 育児休業中の社保料免除: 産前産後・育児休業中は社会保険料が免除(会社負担も免除)。手続き失念が多い
- 年末調整の「生命保険料控除証明書」の管理: 11月〜12月に従業員から収集する書類が複数ある。未提出者への催促が発生
- 退職者の住民税の扱い: 退職月によって一括徴収か普通徴収切り替えかが変わる(1〜5月退職は残額一括徴収が原則)
賞与計算に関しては、専用の計算ツールを活用することで計算ミスを防げます。
給与計算ソフト・税理士・社労士の活用
初心者が最初から給与計算をすべて手作業でこなすのは難易度が高いです。 以下の3つの活用方法を検討してください。
1. 給与計算ソフトの活用
市販の給与計算ソフト(弥生給与・freee人事労務・マネーフォワードクラウド給与など)は、社会保険料・源泉徴収税額の自動計算・電子申請に対応しています。 手作業によるミスを大幅に減らせます。
2. 社会保険労務士(社労士)への相談
労務管理・社会保険の手続き・就業規則の整備は社労士の専門領域です。 毎月の給与計算を委託することも、スポットで相談することも可能です。
3. 税理士への相談
所得税の源泉徴収・年末調整の処理に不安がある場合は税理士への相談が有効です。 給与計算の確認だけでなく、会社全体の税務処理と一括してサポートを受けられます。
年末調整・源泉徴収票交付までの年間フロー
給与計算には毎月の定例作業のほかに、年に一度の「年末調整」があります。 年末調整は、毎月源泉徴収してきた所得税の過不足を精算する作業です。
| 時期 | 作業内容 | 関連書類・手続き |
|---|---|---|
| 10〜11月 | 従業員から控除申告書類を収集 | 扶養控除等申告書・保険料控除申告書・配偶者控除申告書 等 |
| 12月給与時 | 年末調整計算・精算(過徴収は還付/不足は追加徴収) | 年末調整計算(控除の集計・税額計算) |
| 1月10日まで(原則) | 12月分源泉徴収税額 + 年末調整過不足の納付 | 所得税の納期の特例(従業員10名未満は特例あり) |
| 1月31日まで | 源泉徴収票の交付(従業員へ) | 源泉徴収票(A票)を全従業員に交付 |
| 1月31日まで | 法定調書の提出(税務署へ) | 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表 |
| 1月31日まで | 給与支払報告書の提出(市区町村へ) | 翌年度の住民税算定基礎になる |
年末調整・源泉徴収票の計算ツールもご活用ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 給与計算の期間(締め日・支払日)はどう決めますか?
就業規則または雇用契約書で定めた締め日・支払日が基本です。変更する場合は就業規則を改訂し、従業員に周知する必要があります。 一般的には「末日締め・翌月25日払い」や「20日締め・当月末払い」などが多いです。
Q. 社会保険料はいつから引くのですか?
社会保険(健康保険・厚生年金)の保険料は、資格取得月の翌月の給与から控除するのが原則です。 月末退職の場合は資格喪失日が翌月1日になるため、退職月の給与から2ヶ月分(当月分+退職月分)をまとめて控除します(健保法36条・厚年法14条)。雇用保険は入社した月から控除します。
Q. 所得税の甲欄・乙欄の違いは何ですか?
甲欄は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を会社に提出している従業員に適用します。 乙欄は申告書を提出していない従業員(副業・掛け持ち等)に適用し、税率が高くなります。 入社時に申告書の提出を確認してください。
Q. 住民税の特別徴収はいつから始まりますか?
住民税の特別徴収は毎年6月分の給与から開始します。5月頃に市区町村から通知書が届き、6月〜翌5月の12ヶ月で分割徴収します。
Q. 月の途中で入社・退社した場合の給与計算はどうなりますか?
月途中の入退社は日割り計算が必要です。計算式は「月額給与 ÷ 所定日数(または暦日数)× 実際の勤務日数」で、どちらを使うかは就業規則で確認してください。 社会保険料は月単位発生のため日割りはしません。
Q. 残業代の「割増賃金の基礎となる賃金」とは何ですか?
基本給+役職手当・資格手当・家族手当(一定条件を除く)等が算入対象です。 通勤手当・住宅手当など労働基準法施行規則第21条に定める7種類は除外できます。
Q. 年末調整は会社でやらないといけないのですか?
給与支払者(会社)が年末調整を行う義務があります(所得税法第190条)。 社員が扶養控除等申告書を提出していれば、会社は年末調整を実施しなければなりません。 不明点は税理士・社労士への相談をお勧めします。
本記事の情報は2026年5月現在(令和8年度)のものです。社会保険料率・源泉徴収税額表は年度ごとに改定されることがあります。最新情報は 国税庁公式サイト、 全国健康保険協会(協会けんぽ)、 日本年金機構 でご確認ください。
本ツールは令和8年度(2026年)の税率・基準をもとに計算しています。最新の情報は各省庁のWebサイト等でご確認ください。
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